報告題:南北経済における技術政策についての経済厚生分析

<報告概要>

 本報告の目的は、R&D活動によって新しい産業を創出する北の先進国と、

低賃金労働者の存在というコスト上の優位性を利用して北の生産技術を導入

する南の発展途上国による動態的な南北貿易モデルを用いて、南の技術導入

や北のR&D活動を促進させる技術政策が南北両地域の経済厚生にどのような

影響を与えるかを分析することである。

 本報告では、GrossmanHelpman(1991 ch.11)で示された南北経済の動学的

一般均衡モデルに若干の条件を加えたうえで定常状態への移行過程を明らか

にし、北のR&D活動や南の技術導入活動に対する補助金政策が南北の経済厚

(Welfare)にどのような影響を与えるかを比較動学によって明らかにしている。

 比較動学分析によって明らかになった結果は次のとおりである。

1) 北の先進国が自国で行なわれるR&D活動に補助金を支給するとき、北の経済

    厚生は上昇する。南の経済厚生は、南北間の賃金格差が大きい時には上昇

   するが南北間の賃金格差が小さい時には低下することもある。

2) 南の途上国が自国で行なわれる技術導入(模倣)活動に補助金を支給するとき、

    南北経済における南のプレゼンスが非常に小さく南北間の賃金格差が非常に

    大きいときには、南北両地域の経済厚生が上昇する。しかし、南のプレゼンスが

    ある程度大きいときには南北のいずれかまたは南北両地域の経済厚生が低下

    することが有り得る。また、南北間の賃金格差が小さい場合には南の政策は南

    北両地域の経済厚生に影響を与えない。

GrossmanHelpman(1991) Innovation and Growth in the Global Economy.

             The MIT Press

Key WordInnovationImitation/南北経済/独占的競争/内生的成長/技術政策